【コラム第6回】私の教育論

 近年、日本では職業に対する価値観に大きな変革が起こってきていると感じます。これまでは、猛勉強をして中央官庁もしくは大企業に入るのが1番、そのための頂点は東大合格、という揺るぎ無い構図が構築されていました。しかし、バブル経済の崩壊後、学歴至上主義・大企業至上主義の構図は崩れかけており、従来の企業の足元を脅かす若い起業家さえ出現しています。日本的価値観の枠に留まらず、世界に名を轟かす人材も増えてきました。日本人でも、スポーツで世界を舞台に通用するプロフェッショナルへの道が開け世界的ヒーローになれたり、漫画家やアニメーターが世界的名声を得ることができるなど、様々な分野で日本人が世界的に活躍できる時代を迎えています。

 こうした変化を踏まえ、子どもたちの教育の環境も大きく変わるべき時期が来ていると思います。私が今の子どもたちに願うことは、まず、大きな夢を持ってもらいたいということです。そして、その実現に向けて精一杯がんばって欲しい。そのためには、大人たちのフォローが不可欠です。
 子どもが夢を早く持つには、小さい時期に両親がその子の持っている才能に気づくことが重要ですし、温かい家庭環境が子どものがんばりを支えることになります。家庭を中心に、それを取り巻く学校や教育機関同士の連携に加え、教育の仕組み作りを円滑にするためには、行政がその環境を整えることも不可欠です。子どもの才能を育てることができる社会全体のシステムが必要とされているのです。

 現在、私は、専門学校、高等学校、大学などの教育機関の運営に携わっています。昭和52年に教育事業を興してから今年で28年、専門学校は27校を数えるようになりました(新潟県内に22校、福島県郡山市に5校)。

 専門学校では、様々な分野の資格取得、技能取得、才能開花を応援しています。丁寧に一人一人の学生を扱っていくということを原則とし、「ナンバー1」「オンリー1」を実現すべく明確な目標を持って学校運営をしてきました。
 「ナンバー1」とは何だろうと考えると、まずは、国家試験等の合格率日本一。また、デザインや美容等の分野では、プロに混ざってのいろいろなコンペティションに参加して賞を取ること。いずれも、チャレンジする資格やコンペに合わせた実践的なカリキュラムを作り上げますから、資格取得の合格率やトップクラスの育成には実績が出ており、世界的なコンペにおいても最優秀賞を獲得する人材を輩出しています。また、それぞれの学校で勉強している分野の世界一の国、最も進んだ国の大学や専門学校と姉妹校提携を行い、その雰囲気を感じ、交流する環境を整えています。世界の一流に接することで、日本一を目指せる力が養われるのです。

 大学(新潟医療福祉大学)も同様の趣旨で開学しました。この4月から、更なるステップアップを目指す学生や既にプロフェッショナルである社会人のキャリアアップを目的とした大学院も併設し教育内容を充実させています。

 高等学校(開志学園高等学校)は、特に才能教育の実現という意味で面白い内容のものができたという思いがあります。週2回、週4回通学が可能な通信制単位制高校で、大学進学はもちろんですが、ファッションやスポーツ実践、経営ビジネス、マンガ・アニメなどのコースも選択が可能で、生徒は自分の選んだコースのカリキュラムをみっちりと勉強します。開校4年目になりますが、たいへん好評を博しており、新潟県下では定員割れとなる高校もある中、今年度は定員90名のところ130名前後の志願者がいました。いろいろな夢を抱いている思春期に、既存の普通高校のカリキュラムでは思う存分自分の能力、才能を伸ばすということが難しいということもあって、こういった学校が注目されているのだと思います。

 今年の4月にはサッカーの専門学校(JAPANサッカーカレッジ)に高等部ができました。この専門学校は9割が県外生で、全国各地から優秀な学生が集まっていますが、その前段階の年齢で英才教育が受けられる機会を設けたいと考えて設立しました。前述の通信制単位制高校と連携し、サッカーを徹底してやりながら週4回の授業をきっちり行い、高卒の資格を取得できるしくみです。
 プロを目指す中学卒業生25名を定員として、アルビレックス新潟ユースに選手登録する生徒と、高校に選手登録する生徒に分かれます。この仕組みによって、アルビレックス新潟ユースは練習環境が整い、年々実力がアップしていくはずです。ユースチームには全日本クラブユース選手権、高校チームには高校選手権やインターハイがあり、ここで活躍した生徒から、5~10年で間違いなくオリンピック代表、日本代表が出てくると信じています。

 また、私は創業者の育成にも力を入れています。しかし、若者が「創業する」と口にした途端、親御さんや親戚縁者の方々が「そんな危険なことはやめろ」と足止めをするというなかなか難しい現状があります。そこで私は、創業を志す人の為に経営大学院を作りたいと考えています。一人でも多くの若者たちに創業して自分のやりたいことを自分で切り開き、活き活きと人生を送ってほしいと願っています。若者の創業をサポートするためにも、やはり創業を行いやすい社会のシステム構築と教育の必要性を感じます。

 昨今の学力低下は、確かに憂うべき事態です。しかし、学力とは一体何なのでしょうか?何の為に必要なのでしょうか?
 適切な時期に子どもたちの眠っているエネルギーや夢を引き出して一人一人が活き活きと明日の夢に向かって成長できる環境を作ること、それが実現できれば、結果として子どもたち自身がそれぞれにとって必要な学力を自ら求めていくことになるのではないかと思います。

 -『力の意思』2005.7月号掲載-(※一部変更)

池田 弘