【コラム第125回】庄内サイエンスパークの挑戦

私は「地方創生」なくして日本の再生と成長はないと考えております。安倍内閣の「まち・ひと・しごと創生会議」の議員としても、そのような立場に立って発言してまいりました。
そうした観点から見て、山形県の鶴岡市にとてもおもしろい取り組みがあります。地域の豊かさを追求するために「完全地域主導」をコンセプトにした、「庄内サイエンスパーク」という新たな町づくりへの取り組みです。
  
サイエンスパークの21.5ヘクタールの敷地には現在、慶応義塾大学先端生命科学研究所、鶴岡市先端研究産業センター、YAMAGATA DESIGN株式会社、Spiber株式会社の本社研究棟が入居しています。
慶応の先端生命科学研究所は、先代の市長の尽力で誘致を実現。本格的なバイオの研究所で、ITを駆使した「統合システムバイオロジー」という新しい生命科学のパイオニアとして、世界中から注目されています。 研究所発のベンチャー企業として「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社」が、平成25年に東証マザーズへの上場を果たしています。
大いに注目すべき企業がSpiber株式会社です。慶応の先端生命科学研究所でクモの糸を研究していた関山和秀さんが、強靭で柔軟な「蜘蛛の糸」を、現代技術によって製品化・量産化するために設立しました。合成クモ糸の開発、生産の技術を世界で初めて確立し、様々な分野での利用が見込まれています。

こうした取り組みに感化されて、サイエンスパークの開発に当たる会社を設立した人がいます。YAMAGATA DESIGNの山中大介代表取締役です。山中さんは慶応義塾大学を卒業後、大手不動産会社に就職しましたが、「自分は社会のために何ができるのか?」という自問自答をしていたところ、Spiber Incを見学する機会を得て、すぐ入社を決意し山形へ移住します。
ほどなくYAMAGATA DESIGNを設立。鶴岡市のサイエンスパーク開発計画における、農地転用や開発許可の取得などを業務とする会社として設立。現在はその推進にあたっています。

サイエンスパークのプロジェクトでは地域経済を独立させる「産業」「交流」、地域・社会を豊かにする「教育」「医療」「一次産業」の5つのテーマを掲げています。
「産業」では先端生命科学の産業化を中心に新たな産業を築く。「交流」ではホテルや温泉により様々な出会いの場をつくる。「医療」では予防歯科のモデルを展開する。「教育」では子供棟の設立で、12歳以下の放課後教育を行い「生きる力」を身につけさせる、などに取り組んでいく方針です。
地域主導でまちをつくっていく。私はこの山形の取り組みを、地方創生の観点からとても多くの示唆に富むケースとして注目しています。

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