【コラム第65回】 歎異抄の薦め

 親鸞の教えを弟子の唯円が著したとされる「歎異抄」。私の愛読書の一つです。
「歎異抄」に初めて接したのは高校1年生の時でした。神主の家に生まれ、神とはなんぞや、どう生きるかについて思索をし、偉人伝など様々な本を読み模索を続けていた頃です。 
  私にとって大変難解な内容でした。悪人浄土の論議、解釈論争を巻き起こしたかの有名な一節「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」。悪人の方がもっと救われるというのはどういうことなのか、そんな考え方もあるのかと衝撃を受けたのを覚えています。
  この本に接したことが、人間の本質を考えさせる一つのきっかけになったことは間違いありません。

  日本語で書かれた書物の中で、最高の一冊であると評価する人も多い名著です。司馬遼太郎は「非常に分かりやすい文章で、読んでみると真実のにおいがする」と評しています。
  また、日本の3大哲学者の一人と言われる三木清は「万巻の書物の中から、たった一冊を選ぶとしたら歎異抄をとる」と述べています。

  国内においては格差が進み、悲惨な事件も相次いでいます。また、国外に目を向ければ荒波の中で、進むべき方向を見失いがちな混迷の現代。  
  そんな中、最近も五木寛之さんや斉藤孝さんなどが出された関連本が、ちょっとしたブームになっているようです。
  歎異抄が、人間の本質やいかに生きるべきかを改めて考えさせてくれるからだと思います。

池田 弘