【コラム第58回】 まちなか再生

 私は新潟市の「古町」と呼ばれる古くからの商店街の一角にある、小さなお宮の長男として生を受けました。私の原点と言える土地、古町もご他聞に漏れずシャッターストリート化が心配されてきました。この古町の中心に当たる「古町十字路」は、言わば新潟市の「銀座」で、かつては賑わいの中心地でした。しかし昨年暮れ、老舗百貨店の大和が新潟店の撤退を表明、続いてその向かいの老舗書店も廃業することを表明したのです。
 新潟市民は大きな衝撃を受け、経済界もメディアもこの話題で持ちきりです。市が「まちなか再生委員会」を立ち上げて活性化への道筋を探ることになり、私も委員の一人となりました。 

  私は、まちなか再生のためには発想の転換が求められていると考えています。既に「新潟島」と呼ばれる中心部(信濃川とその分水路、そして日本海に囲まれた地区)からは郊外への世帯流出が続き、人口は大きく減っています。この場所で商売をする店が、毎日の食料品や雑貨などの日常用品や電化製品などで郊外型店舗とと価格競争をしても、パーキングの問題もありなかなか難しいと思います。

  市の中心部であるこの地区に外から人を呼び込むためには、特色のある商品やサービスを提供することが必要だと思います。
 すぐ思い浮かぶのが「食」です。コシヒカリあり海産物あり美味しいお酒もあり。大和の跡地には、新潟の美味しい食巡りができるような施設ができたら素晴らしいでしょう。要は「新潟」を発信できるかどうかだと思います。

 ツーリズム的な視点で申し上げれば、街を「回遊」して楽しむことができるような複数の施設があれば素晴らしいと思います。新潟の古町通りには、水島新司さんのマンガのキャラクターの像があり「マンガストリート」としてちょっとした名所になっています。
  あぶさんや岩鬼の像の前で記念写真を撮るグループをよく見かけます。でも、そうした人たちを観察すると、それを見た後で行くところに困ってしまっているのが分かります。マンガやアニメの博物館や美術館などの施設があれば、そこへ行ってさらに別の楽しみ方が広がると思います。
 新潟市には「やすらぎ提」という信濃川の護岸を整備した素晴らしい緑地帯・公園があります。私が執務するNSGグループの本部から、歩いて4、5分のところにあります。 
  新潟市民に「市内で一番好きな場所」のアンケートをすると、「夕陽の落ちる日本海を眺める海岸」と「やすらぎ堤」が、1位2位を争うほどの市民の宝物であり憩いの場になっています。
  全国の新潟クラスの都市では、市の中心部を流れる大河の護岸が散策路、公園化されているケースは珍しいのではないでしょうか。
  また、やすらぎ提から連なる「万代島」と呼ばれる河口付近の一帯は、マンハッタンを思わせるウォーターフロントとしての雰囲気を持っています。「回遊型」の魅力を持つ都市として人を呼び込める素材はあるわけです。
 そして提案したいのが、新潟市を最先端のエコの街にすることです。中心部への車の乗り入れは公共交通機関とごく一部の認可制にして、移動の基本は自転車にする。コンパクトシテイを志向することで、若い世代のライフスタイルにもフイットし、高齢者世代にも住みよい街になります。
 大量生産・大量消費のアメリカ型の生活スタイルはもう過去のものです。新潟がエコの生活スタイルを唱え実践すれば、新たな時代の街づくりのリーダーとして注目を集めることになるでしょう。
 さらに私が声を大にして申し上げたいのは、街つくりの最後の決め手となるのは、なんと言っても働く場があり人がそこで暮らせることだということです。
 私の提案は、新潟を「コンテンツ産業の街」にすることです。世界に通用するコンテンツ産業のクラスターを新潟で育成し、マンガ・アニメーションとITを核に、今後10年間で5,000名の雇用を創出するというプランを私は持っています。
 新潟は赤塚不二夫さんや水島新司さん、高橋留美子さんらを輩出したマンガ王国です。「ガタケット」や「にいがたマンガ大賞」などのイベントも毎年開かれています。
 新潟市にはNSGグループの日本マンガアニメ専門学校があり、これまでに47名のマンガ家デビューを果たしています。マンガの街として育成していく要素は揃っているわけです。
 ITの分野でもNSGグループの新潟コンピュータ専門学校をはじめ、いくつもの専門学校があり多くの学生が学んでいます。情報処理国家試験などの資格試験でも全国トップレベルの実績を上げています。
 コンテンツ産業については、経済産業省も国策として取り組む方針を示しており、世界的にも多くの国々で雇用を生みだしている可能性の広がる分野です。
 もちろんグローバルな競争に勝ち抜くためには、多くの支援体制が必要だと思います。例えばコンテンツ制作ファンドを行政2億、民間1億程度の出資で創設して制作費の3分の1をそのファンドが支援すれば、1本2000万円の作品を45本制作することが可能になります。これを毎年行い、5年間続けることを提唱いたします。
 さらにスタジオやIT機器などを行政が設置するか、あるいは設置への補助を行うかして、共同利用できるようにしたらどうでしょうか。スタッフの居住施設についても、まちなかの空き店舗を建てかえて上部階を住居として利用すれば、企業も人も呼び込めるわけです。
 コンテンツ産業に関連する企業は多様です。例えば、マンガ制作プロダクション、特殊印刷会社、アニメーションスタジオ、デジタル編集プロダクション、CG制作プロダクション、キャラクターショップ、インターネットの関連企業などなどです。
  新潟市に本社を置くこれらの業種の企業に、コンテンツの制作については最低制作費の半分を必ず発注するようにすれば、企業を呼び込むことができて雇用の場が増えていくわけです。10年で5,000名の雇用を生み出し、家族を含めると2万人の居住人口の増加へつなげることも可能です。

 街の再生、特に中心部の再生は、全国の都市の共通の課題だと思います。政令指定都市の新潟が、その成功の良き先例を作れば、他の都市も勇気づけられるのではないでしょうか。私も故郷新潟のために、これから多いに知恵を絞ろうと考えています。

池田 弘