【コラム第56回】 私の人生観

 今回の話は、私のちょっとした決意表明です。それは今後このコラムの中で、私の人生観のようなものもときどきご紹介していきたいということです。
 ご存知のとおり、私はNSGという学校グループの経営者であると同時に、新潟市内にある二つの神社の宮司でもあります。宮司というのは読んで字のごとく、お宮を司る神社の代表です。
 私には多くの職員の働く法人組織の長と、神様にお仕えする神社の長という二つの顔があります。そのせいなのでしょうが、私の考え方やものの見方に触れた人は、「一般的な経営者とはかなり異なる」という印象を持つことが多いようです。
 これはおそらく、私の考え方やものの見方が、古くから日本に伝わる「神道」の教えの影響を強く受けているからではないかと思われます。それは具体的にいうと、「自然崇拝」「祖先への感謝」「多様な価値観への理解」などといった考え方です。
 そもそも私は、新潟の小さな神社の宮司の長男として生まれました。そのため子どもの頃から、神道の教えや神様というものを意識しながら育ちました。
 たとえば、家の手伝いなどにしても、ほとんどが神事につながるものばかりです。また、近所の人たちを含めてまわりはみな、ゆくゆくは私が家業を継ぐことを期待していたので、幼い頃から神道の教えや神様と真摯に向き合うことを余儀なくされました。
 当時はまだ敗戦の影響が色濃く残り、先の戦争への反発から神道への風当たりが強かった時代です。「自由」や「物質的な豊かさ」に象徴されるアメリカ的な価値観がもてはやされる一方で、日本人の「精神性」の象徴ともいえる神社は、すでに多くの人が敬いお参りに訪れるような場所ではなくなっていました。
 正確にいえば、強い批判にさらされていたのは、「神社」という信仰の場ではなく、「国家神道」という行き過ぎた思想のほうです。いずれにしても、そのような時代に、神道の教えや神様というものと真正面から向き合い、これを体感したり学んだりしたのは、非常に珍しいことだったように思います。
 そして、これまでの人生を振り返ってみると、この経験が私にとって大きな影響を与えプラスになっていると感じています。
 それは一人の人間としての生き方だけではなく、経営者としての判断や行動においてもしかりです。
 私が従兄弟の渡辺さんと、専門学校を中心とする教育事業などからスタートしたNSGグループを立ち上げたのは34年前のことです。ここに至るまでの間には、バブル経済の崩壊、リーマンショックをはじめとして、経営基盤を脅かすような危機的な出来事を何度か経験してきました。また、経営判断を誤らせるような誘惑もあり、私自身、心を強く揺さぶられたことが何度かありました。
 こうした危機や誘惑のようなものにあらがうことができず、この34年の間には、多くの名のある経営者が失脚し、多くの会社が倒産してゆきました。しかし、そんな中で私は大きな失敗をすることなく、グループを成長させ続けることができました。
 NSGの主な活動の場は新潟という地方都市ですが、それ自体がかつては一つのハンデでした。目標まではまだまだ道半ばですが、こうしたハンデに負けることなく結果を出し続けてきたことは、グループの教職員をはじめとするスタッフの真摯な努力や関わりのあった多くの人たちの支援があったからこそで、感謝の気持ちでいっぱいです。
 そしてリーダーとしての私を振り返って見ますと、経営判断の一つのよりどころとして、子どもの頃から神道の教えや神様と真摯に向き合う中で身につけた、哲学のようなものを持っていたおかげだったのではないかと感じています。
 この哲学は「神道」がベースになっていますが、「神道の教え」とイコールではありません。私が子どもの頃から強く影響を受けてきたのは、信仰に関する教えだけではありません。そこには古来からの日本人の生き方、あるいは生活の知恵のようなもの、また「中庸」という東洋的なもののとらえ方も含まれているので、その意味でこれは「神道的な考え方、あるいは日本の伝統的な考え方の影響を受けながら培われたもの」といったほうが正確なのでしょう。
 じつのところこうした考え方は、これまでの著作やコラムの中でまだ著してない部分も多々あります。そこで、このコラムの中で時々扱ってご紹介していこうと考えた次第です。
 人間は、いくつになっても成長の途中にあり、亡くなる時まで真理を追い求めて生きるものである、というのが私の人生のとらえ方です。 
  そんな私は、経営者や宮司などいろいろな立場でものを考えるので、これから掲載してゆくコラムを読まれた方が、落差のようなものを感じるケースもあるかもしれません。しかし率直に思ったままを書いてゆこうと考えています。
 それは私が培ってきた考え方やものの見方には、逆境の中で結果を出し続ける力があると感じているからで、それをご紹介することで、厳しい時代を生きるみなさんに様々な問題を解決する際のヒントを提供することになれば、これに優るよろこびはありません。

池田 弘