【コラム第54回】 長谷川義明前新潟市長が語る良寛の心

  私が塾長を務める「にいがた未来塾」、10月のゲスト講師には、新潟市の前の市長で、愛郷会の会長、長谷川義明さんをお迎えし「良寛さんに学ぶ」をテーマに開催しました。

  長谷川さんは、平成2年から3期12年に渡り新潟市長を務められました。現在は新潟の魅力的な街つくりと発展を目指すNPO法人、新潟愛郷会の会長を務めていらっしゃいます。
  この日のテーマは「良寛さんに学ぶ」。長谷川さんはご講演の中で、改めて新潟が生んだ良寛の素晴らしさを浮き彫りにしてくださいました。

  良寛は江戸時代の新潟が生んだ世界に誇れる豊かな精神性を持った先人です。国上山の粗末な庵に住み続け子供と遊んだ良寛は、人々に愛され、時代を超えて今も尊敬を集めています。
  そして今、良寛は改めてアメリカやフランス、ロシア、中国と言った国々で研究され国際的な評価が高まっています。清貧の中で自然と共に暮らし、あくまで優しい心と豊かな人間性を忘れなかった生き方と、残した多くの優れた作品が世界中で注目されているのです。
  良寛はその無垢な生き方の一方で、最高の書芸術を残しており、素晴らしい詩人でもあります。生涯に残した漢詩は700余り、和歌は1300首にもおよびます。これらの作品は書いた後、すぐ人にあげたそうです。今も周辺の民家には良寛の作品がたくさん残っています。草書体の優しい字で、「点の芸術」と形容される作風です。
  良寛の書といえば、重要文化財に指定されるほど価値のあるものですが、惜しげもなく人にあげて相手の喜ぶ顔を見て満足するところが、物欲のない良寛の面目躍如の逸話です。
 
  こうしたお話と共に長谷川さんは、良寛が説いた「人生訓」を披露してくださいました。
  「相手が理解したかどうか確かめながら、様子を見ながらお話をしなさい」
  「相手の立場になってどう行動したらよいのか考えなさい」
  「自分でも良く理解していないことを人に教えるのは良くありません」
  「人の話の腰を折ってはいけません」
  「自分の過去を自慢してはいけません」
  「優しい気持ちを持ち、それを相手に伝えることが大事です」
  「相手が尊敬出来ない人でも仲良くしなさい」
  長谷川さんは、良寛が主体的に生きることの大切さを説いたとおっしゃっています。
  「世の中の全ての事柄は、自分で考えてこそ自分にとって意義のあるものとなる・・・大切なのは自分にとって最善を尽くすことであり、その先のことは神しか分からない」
  自己中心的になりがちな我々現代人にとって、改めて大事にしなければならない考え方がたくさん示されています。江戸も終わろうとしていた頃、新潟には礼儀正しく生き他人を慮って生きるという、日本人の良さをまさに体現していた人がいたのです。

  また、長く新潟市長を務められた長谷川さんは新潟についても言及されました。その中で、政令市になったということは日本を代表する都市になったということであり、独自性と先見性を持った街つくりをしなければならない、と述べられました。
  さらに、「街づくりはその地域固有の条件に立脚して行うべきであり、大陸と向き合う新潟の地の利を活かし、良い農産物に恵まれた田園型の政令市として独自性を出してゆくべきである。既に新潟には、歯の健康、未熟児への対応、優れた特養ホームなど全国の範となるものがたくさんある」と述べ、これから新潟を背負ってゆく塾生を激励しました。
  この日のにいがた未来塾は、参加した塾生にとってそして私にとって、新潟の生んだ素晴らしい先人、良寛さんを学び、新潟の未来に思いを馳せる素晴らしい夜になりました。

池田 弘