【コラム第53回】 ハードオフコーポレーション山本社長

  私が塾長を務める「にいがた未来塾」、9月のゲスト講師には株式会社ハードオフコーポレーション代表取締役会長兼社長山本善政(やまもとよしまさ)さんをお迎えしました。
  ハードオフコーポレーションを、屈指の上場優良企業に育て上げた山本さんのお話は、企業とはいかなる存在であるべきなのかについて、まことに示唆に富んだ内容に溢れていました。今回のコラムは山本さんの講演を取上げます。

  山本さんは、一代でハードオフコーポレーションを東証1部上場企業に育て上げた、立志伝中の人物です。1972年24歳の時、新発田市にオーディオ専門店(株)サウンド北越を設立。創立から20年、店舗も5つにまで増やし、順調に歩んでいたかに見えた矢先に事業は暗転します。わずか4、5ヶ月の間に売り上げが半減したのです。
  「マジメにやってきたのに、何故・・・」倒産もありえる厳しい現実でしたが、そこで自分のビジネスを熟考してみました。すると、自分の都合だけで物事を考え、ビジネスを行っていたのではないかと思うに至ったのです。
  自分のやってきたビジネスを社会は必要としていたのか?そして出した結論は、「社会に求められること以外、ビジネスが成り立つ道はない!」ということでした。
  社会に役立つビジネスとは何か。サウンド北越時代に、オーディオ製品の下取りの中古市を時々開いたら、ものすごく売れたことを思い出しました。これからはエコの時代、モノを大切にするビジネスは、大いに社会性があるのではないか・・・。1993年、リユース品を扱う「ハードオフ」に業態転換しました。
  現在ハードオフコーポレーションは、全国で600を超える店舗を擁するに至り、7,000人の社員が山本社長の打ち出した理念のもとで働いています。

  講演の中で山本社長が、企業にとって「命の次に大切だ」と言われたのが「経営理念」です。ハードオフの掲げている経営理念は次の4つです。
  「1.社会のためになるか 2.お客様のためになるか 3.社員のためになるか 4.会社のためになるか」
  ハードオフには、この4つの条件すべてを満たすビジネス以外は手がけないという、確固たる方針があります。
  山本社長曰く、「ビジネスプランを先に立てるべきではない、まずどのような形で社会の役に立ちたいのかを考えるべきだ」。
  商品を売ろう、儲けようではなくて、まず第一に考えるべきことは社会への貢献というわけです。それさえ明確化できればどんどんやるべき事も見えてくるし、苦しい時も乗り切れるはずだ・・・若い塾生を前に、山本さんはさらに熱弁をふるわれました。
  「企業にとってコンプライアンスはとても大切である。ルールを守れない企業は、社会から退場を命じられる。それを守るために、しっかりとしたガバナンスは不可欠である」
  「企業にとって、社会の変化に対応できるかどうかが、永続的に存続できるかどうかの大きなポイントである。それができないアメリカの自動車メーカーは役割を終え、倒産の憂き目を見ることになった」
  こうした姿勢こそが大切であって、店のデザインをどうするだとか、商品の内容をどうするだとか、どんな風に宣伝を行うか、などというのは、単なる戦術論のレベルに過ぎない。戦術論をいくら検討して、一事的な成功を収めても、必ずいつか破綻する、これが山本さんの信念です。

  塾生の中には起業を志す若者もいます。企業とはいかなる存在であるべきなのか、この本質的な命題をめぐりこの日山本社長がお話くださったことは、彼らにとってとても貴重な内容だったと思います。
  経営者である私も、経営理念の重要さや社会への関わり方の大切さを日ごろから職員に話しています。私にとっても、この日のにいがた未来塾は、改めていろんな事柄を見つめ直す場となりました。

池田 弘