【コラム第51回】 上古町に糀(こうじ)の店

 私が宮司を務める愛宕神社のある古町通り、そのいわゆる「上手」に当たる一帯、通称「上古(カミフル)」に、次々としゃれたお店がオープンしています。シャッター通り化が心配された街の様子は、オーバー・アーケードの完成とも相まって、徐々に変貌を遂げつつあります。

  そんなカミフルではこのところ、特徴あるしゃれた紙のスリーブを巻いたカップを片手に、通りを歩く方たちを良く見かけるようになりました。彼らが手にしているのは、今月はじめに古町2番町で開店した、「古町糀製造所」のドリンクやアイスクリームです。ほんのちょっと、ヨーロッパの都市や京都なんかの観光都市の光景を連想するのはおおげさでしょうか。

 「古町糀製造所」を出店したのは、東京都内を中心におむすび店、銀座「十石」を展開する和僑商店です。「和僑」というのは、「海外へ飛躍を目指す日本の商人」という意味で、華僑からイメージした造語です。

  和僑商店の若き社長、葉葺正幸さんは私が支援する経営者の一人です。私が会長を務める異業種交流会501のメンバーでもあります。

 彼との出会いは、彼が新卒でNSGグループの会社に入社してきた時に遡ります。元気のいい新入社員でした。あるとき彼は、グループで設けている自己申告制度で、「総理大臣になりたい」と書いてきました。

  大望を抱いた若者は大好きな私です。「まず自分で会社を起こし、株式会社を公開してまとまったお金を得てから政界を目指したらどうか」ともちかけたところ、受け入れてくれました。

 2,000年に会社を設立。銀座におむすび屋を開いたのを皮切りに、幾多の苦難を経て、現在は何店舗かのおむすび屋を中心に年商3億を超えるまでに成長しました。

 「古町糀製造所」は、和僑商店の展開する糀の店の第一店舗です。取り扱っている商品は、抹茶や豆乳やオレンジジュースや黒酢ソーダなどに糀を加えたドリンク、またこれも糀を加えたアイスクリームなどで、今後はやプリンやまんじゅうも販売される予定です。

  木をふんだんに使ったしゃれた店内のベンチでも飲めるようになっています。こうしたお店での販売に加えて、インターネット販売も予定されています。

 糀は「飲む点滴」とも表現され、アミノ酸を豊富に含む栄養価が高く、江戸時代には糀で造る甘酒という形で、食が細くなる夏場に飲まれていた健康的な食品です。
 糀は県内の酒蔵や味噌蔵で委託製造してもらっていますが、そのこだわりが尋常ではありません。通常、せんべいや醤油や味噌などの加工品に使う米はいわゆる「加工米」です。ところが「古町糀製造所」で、糀を作るために使用しているお米は「新潟コシヒカリ」なのです。

  米の加工食品の常識では考えられないほど高品質なお米です。「古町糀製造所」で提供しているのは、こんな風にして作られた商品の数々です。 

 葉葺社長には和僑商店を展開してゆく上での卓越したコンセプトがあります。それは、地域の財産と言える食をめぐる技術や財産を残し発展させてゆこうというものです。そして、「和」すなわち日本の素晴らしい「食」を、全国に、世界に発信してゆこうというものです。ファーストフードやジャンクフードとは対極にある、本物の「食」の追及がテーマなのです。

 こうしたコンセプトに基づいて、徹底的に食材を選び抜いた和僑商店のおむすびやお弁当は、銀座や霞ヶ関のビジネスマンたちに大好評です。評判を伝え聞いた外国人からも、本国で共同ビジネスにより「十石」を出店したいという申し込みが何件も来ているほどです。

 葉葺さんは、今回新潟で麹ドリンクが好評を得たこともあり、この麹ドリンクとセットで海外展開を検討していければ、と計画を立てています。

 「本物」を求める時代にあって、そのニーズにマッチした事業展開を図る和僑商店。葉葺さんのビジネスに対する確かな姿勢が大きな可能性を広げているのです。

池田 弘