【コラム第50回】 新潟の快男児、天野尚さん

  私が塾長を務めております「にいがた未来塾」、6月は写真家の天野尚氏をゲスト講師にお招きし、「新潟と環境を考える」をテーマに開催しました。天野さんは「杉と男は育たない」新潟モンには珍しいと言いますか、豪快な生き方をしてきた方です。

  天野尚さんは水草栽培関連の用品メーカー「アクアデザインアマノ」を経営されています。元競輪選手にして自然環境カメラマンそして経営者と異色の経歴をお持ちの54歳です。
  旧巻町の鎧潟の近くで育った天野さんは、水中生物の世界に心ときめかし、冒険家になることを夢見る少年時代を送りました。吉田商業高校では自転車部でインターハイや国体に出場、卒業後はプロの競輪選手として16年間活躍されました。自転車を漕ぎながらも、時間があれば西表島や与那国島に通って、チョウやトンボなんかの生態写真を撮影するというちょっと変わった選手だったそうです。
  引退後は熱帯魚ショップの経営者兼自然写真家として活躍。お酒の「ハイボール」をヒントに、液化炭素ガスを気泡にして水中に供給する装置を開発。その一方で、アマゾンに行ってワニと格闘し地元のインディオに尊敬されながら自然写真を撮ったり、ボルネオ島の3000メートルの山に登って撮影したりという行動派です。
  また、佐渡の海でコブダイを撮って写真コンテストのグランプリを受賞したり、巨大千年杉に魅せられたり、という新潟が大好きなロマンティストでもあります。
  2007年に公開された長沢まさみさん主演の映画「そのときは彼によろしく」では、劇中に登場する水槽のレイアウトを担当されました。「いま、会いにゆきます」の著者市川拓司氏が書いた小説の映画化ですが、市川氏が天野さんのファンということで実現したものです。
  こんな自然と冒険を愛する天野さんには、NSGグループの国際ペットワールド専門学校講師も務めていただいております。

  天野さんの経営される会社は、その分野では世界に知られたちょっとしたグローバル企業です。西蒲区の巻に本社を置き、社員は70数名。失礼な言い方をお許しいただければ「田舎にあるとは思えない」ほど素敵な事務所です。会社の敷地の一角に素晴らしいネイチャー・アクアリウム・ギャラリーがあって、土日と祝日に開放されています。
  世界に認められる企業を新潟に生み出す、私が求めてやまないこのテーマを、天野さんはご自分の力で実現されたのです。
  塾では私とのフリートークの中で、ある出来事について天野さんから私の見解を聞かれました。それは、天野さんが杉を初めとする佐渡の原生林に魅せられて、写真で紹介したことについてです。天野さんいわく「あの一件で某新聞から叩かれました。私が紹介したことで大勢の人が訪れるようになり、環境破壊につながった、と批判されたのです。」
  この件について見解を求められた私は、「人に見てもらえないのなら感動も生まれないし、実体も分かってもらえません。素晴らしさを確かめて認識してもらえることで、大切にすべきものへの意識が高まるのではないでしょうか。次世代へも引き継いで行けるような保護をして環境を維持してゆくことが大切だと思います。佐渡全体が環境への高い意識を持った、世界に誇れる究極のエコアイランドになれば素晴らしいし、そうあるべきです。」とお答えしました。
  天野さんは佐渡という島について、「暖流寒流が交じり合う佐渡は、北限のサンゴがあり、林檎とみかんが両方取れる珍しい土地で、山野草の種類も多い素晴らしい自然環境」だとおっしゃっています。しかし人間が守らなければその自然も崩壊してしまう、と言うのが天野さんの考えです。それは世界を回り、アマゾンの環境破壊などを実際に見てきた経験に基いたものだと思います。

  天野さんは「私は50カ国以上の国を回ったが、美しい風景や環境の中に暮らす人の心は素晴らしい。環境破壊された国の人の精神は疲れている。」というお話をされました。
  すぐれた環境の中でこそ素晴らしい社会が生まれや文化が花開く。もし日本にコンクリートジャングルの東京しかなかったら、殺伐とした同質化社会になってしまうはずです。多様な地方があってこそ素晴らしい日本が作ってゆけるのです。自然を守り家族と共に暮らす個性ある地域社会があってこそ、優れた人材を生み出すこともできるし、良い国を作ってゆくこともできるのだということを改めて考えました。

池田 弘