【コラム第49回】 神話の地・高千穂を訪ねて

 今年の春、神話の里として有名な宮崎県の高千穂を友人たちと訪れてまいりました。日本の神話の世界の舞台となった土地で、神主にとっての原点と言える場所の一つです。一度はうかがいたいと常々思ってきたところでしたが今回ようやく実現しました。

  私は、日本YPO(Young・Presidents Organization)時代にお付き合いをさせていただいた方々と、YPO卒業後も「未来エネルギー研究会」という勉強会を作り、全国各地の視察を兼ねた研修を年に数回行っています。
  私が今年還暦を迎えるので、高千穂を訪れお祓いを受けたいというわがままな提案をしたところ、皆さんから賛同いただいたのです。春に訪れるということで皆さんのスケジュールを調整した結果、唯一可能だった日が4月16日でした。
  高千穂神社はちょうどその日が春の大祭、年に一度奥院の神殿が開かれる特別な日です。偶然に重なったのですが、後藤俊彦宮司に新潟の神社の宮司である私の立場を告げてお払いをお願いしたところ、特別のご縁を感じていただいたようで、お忙しい中ではありましたが、お引き受けいただけるとのご返事をいただいたのです。本当に感謝しております。

  高千穂は、日本と言う国が産声を上げた地として数々の伝説・神話に彩られています。高千穂神社は2000年に近い歴史を持っており、国家鎮護の神として信仰を集めてきました。この地をめぐり日本書紀に記された神話を簡単に振り返ってみます。
  神代の昔、高天原を収めていた天照大神は暴れもののスサノオの命(ミコト)にお怒りになり、天岩屋に閉じこもってしまいます。天地が真っ暗になり、多くの災いが起こりました。この時、天照大神に岩屋から出てきていただくために行ったという、岩屋の前での踊り(「神楽」の始まりになったと言われています)のお話はあまりにも有名です。
  その後天照大神は、荒れた地上界を心配されて孫のニニギノ命(ミコト)を八百万の神々と共に派遣しました。いわゆる天孫降臨です。一行が降り立ったのが日向の高天原で、ニニギノ命の3代のちのご子孫が「東に都を定めると国は安定する」と大和へ移り(神武東征)、初代の神武天皇になられたのです。
 そうした日本にとっての神話の里であり、天皇家の故郷と言ってもいい土地が高千穂です。

 さて、4月16日の昼頃、大雨の天気予報を心配しながら熊本空港に降り立った我々を出迎えてくれたのは、カラリと晴れ上がった青空でした。車で高千穂へ向ったのですが、春の大祭の高千穂神社はたくさんの方で賑わっていました。無事お払いを受けた我々は、近くの旅館に泊まり、神社の舞殿で古代から行われてきた夜神楽を鑑賞しました。翌日は、神話の世界を感じさせる高千穂地方を巡り、天照大神を祭った天岩戸神社にも参拝し帰途に着きました。
  初の高千穂旅行でしたが、改めて日本と言う国の長い歴史と伝統を考える機会となり、感動的な研修会でした。

池田 弘