【コラム第39回】新潟経済同友会ロシア極東視察を終えて

   3年ぶりのロシア極東は、驚くような様変わりを見せていました。まず感じたのが街全体から受ける活気で、溢れかえる車は、日本製の中古車がほとんどですが年式はぐっと新しくなっていました。ウラジオの車保有率は、対人口比でロシア一ということで、なんでも60万人の人口に対し32万台の車があるそうです。あちこちで渋滞が起きていました。食べ物も、新鮮な美味しいものばかりになりました。以前のような干からびた鮮度の落ちたものは出なくなり、何も心配せず食事を楽しむことができるようになっていました。ホテルの料理は肉、野菜、パン、ハムにチーズ、あらゆるもののグレードが上がった感じがします。デパートや市場へ行けば、豊富な食品や雑貨は、この国の経済状況の好調ぶりと資本主義が機能し始めたことを如実に物語っていました。通訳の予約は何週間も先までいっぱいだそうです、外国人の入り込みは、ロシア極東での資源などをめぐるビジネスニーズの急増ぶりを示しています。街のあちこちでビル建設などのインフラ整備が始まっていました。この国は資金を得たことでその資金が血液のように国を回り、体を動かし始めたのだという感じを受けました。

  私は今回の視察を終えて、改めて日本海横断三角航路のプロジェクトを進めることの大切さを再認識しました。確かに三角航路は、各国の思惑があって課題は多い、しかしチャレンジしたことでいろんなことが分かりました。これは大きな成果でした。課題がどこにあるのかが分かればあとはそれを解決すればいいのです。雲をつかむようだった話が、具体的な手の届く努力次第で解決できるレベルまで降りてきたということだと思います。

  経済発展の進むロシアにとって、アジアは巨大な人口、すなわちマーケットを抱える地域です。今後アジア地域を無視してはやっていけないはずで、その地域との窓口となる港や航路は不可欠です。またアジアにとっても、SLBでヨーロッパロシア、ヨーロッパ諸国とつながる大動脈の出発点としてのロシア極東の港は極めて重要です。そうした諸事情を考える時、新潟にとって絶好のチャンスがめぐってきたことが分かります。また中国にとっても、巨大な工業団地の建設を進める内陸部からの輸送ルートとして、日本海への窓口は欲しくてたまらないものです。では日本側の受け入れ港はどこになるべきか?首都圏へのアクセス、インフラの充実、そして政令指定都市であることのメリット、どこから考えても新潟にアドバンテージがあります。そうした意味において、9月のナホトカ航路開設についても大歓迎しております。三角航路とはユーザー層も違うでしょうし、いろんな航路が日本海を行き交うのは素晴らしいことで、経済同友会としても全面的に応援してゆくべきです。長く停滞してきた環日本海を取り巻く経済界の動きにようやく変化が出てきた今、この動きを加速させるべきと改めてウラジオの発展を見て感じた次第です。

  極東の人たちはものすごく日本ひいきです。日本は憧れの国です、教育の面でも。ウラジオには日本語を学ぶ学生が3,000人もいます。ちょっとした日本語ブームが起きているそうです。日本語ができれば条件の良い就職も可能ですし、日本の企業に入る道も開けてきます。NSGグループの専門学校で日本語を学ぶロシアからの留学生は、現在8人を数えています。当グループと提携しているロシア極東の大学は6校あり、当方へは交流などいろんな要望が来ています。ロシアの方々も、21世紀に祖国を担う人材を育てることの必要性を感じているのでしょう。資源による好景気に陰りが見えてきたときに、優れた人材がいることがいかに大切かということです。私はロシア極東の大学や専門学校との交流をますます進めて行こうと考えております。

  また昨今は日本への観光客や買い物客も増えています。資源高でお金持ちが増え生活レベルも上がったのでしょうが、それを消費する場所としてはやはり日本なのでしょう。素晴らしいサービスのホテル、ブランド品満載のショッピング、美味しくて安全な料理、充実した消費文化を持つ日本は憧れの地なのでしょう。こうした中で、北海道や軽井沢、東京などと並ぶ行き先の一つとして新潟の果せる役割は大きいはずだと感じました。呼び込むことができれば大きな地域おこしの材料になるでしょう。食、温泉、芸妓、スキー、新潟にはその魅力があるはずです。

  私は同友会の皆さんが帰られた後もしばらくウラジオに残りましたが、ちょっとした収穫を得ることができました。7月5日、私はウラジオストク市のサッカーチーム「ルチ・エネルギヤ・ウラジオストク」のクラブハウスを訪問し、No2で実質的な運営責任者であるエグゼクティブ・ディレクターのアリ・イバドフ氏と2時間ほど意見交換を行いました。この「ルーチ」は、ロシアのプレミアリーグに昇格した日本で言えばJ1のチームです。予算規模もアルビレックス新潟と同じくらいで、平均身長190センチ近いのではないかという大型選手揃いのチームです。この意見交換で、来期(2009年)にトップチームかサテライトチームの親善試合か合同練習の実現に向けて日程調整を行うことと、ユースやジュニアレベルでの交流について可能性を検討してゆくことで一致を見ました。今後スタッフによる実務的な日程等の調整が行われますが、一昨年は先方からの試合の打診を日程の都合で見送った経緯もあり、是非今回は実現したいところです。ルーチのホームスタジアムの観客数は1万人程度で、東北電力ビッグスワンスタジアムで4万人の大観衆の前で試合ができればこんなに素晴らしいことはないと話していました。試合はかつての中国の大連との試合のような友好ムードをアピールする親善試合のような形が取れればよいと思っています。

  今回の視察では多くの方々にお世話になりました。おかげさまで充実した視察となりましたことをこの場を借りて御礼申し上げます。

池田 弘