【コラム第36回】 志と夢を持つ人を支援するということ

 インドの革命家ガンジーは有名ですが、ガンジーを陰で経済的に支えた貿易商がいたことをご存知ですか?
 私は、お宮の跡とりとして神社界に身を置くだけの決められた人生に随分悩んでいた青年期に知り、とても衝撃を受けました。
 地域社会の幸せを求めるために、誰かを経済的に側面から支える役割にも大きな価値があるのだと気づかされたからです。私もこの貿易商のように志のある人を支援するという道を歩みたいと考えました。それにはまず自分も経営をしてみようと始めたのが、神社の敷地内に設けた学校と塾。それが新潟総合学院でした。

 それから二年後、教育事業を軌道に乗せるために奔走していた1979年のある日、私のところに商社を経てリクルートに入った20代半ばの新入社員がやってきました。
「よい人材が欲しかったら、うちにお金を払ってください。」
 どの企業もよい人材を欲しいでしょうが、教育事業は人材こそが最大の財産です。形あるものを売るサービスとは異なり、学費を先に頂いて学生の将来をお預かりし卒業までには結果を出す、という全面的に信頼をいただいて初めて成立する事業です。優れた先生や職員の存在が生命線になります。
 あの時ちょっと強引な感じながらも彼に不思議な魅力を感じたのは、彼の言葉が単なる営業トークではなく本質をついていたからかもしれません。
そうした言葉には人を動かす言霊が宿っているものです。

 その後、リクルートで頭角を現した彼は、新宿支社長、首都圏の営業部長を歴任しますが、時はまさにバブルが音を立てて崩れ落ちていく最中。就職難の時代が続き、雇用創造の仕掛け人になる思いを日増しに募らせていたそうです。
 40歳までに独立を考えていた彼は、新規事業の立ち上げに携わる中で、インキュベーターの存在を知ることになります。当時、アメリカシリコンバレーでの雇用創出は8割がベンチャー企業によるもので、その起業背景にインキュベーターの存在が欠かせませんでした。
 インキュベーションとは、「卵を孵化する」という意味で、ビジネスの世界では、「事業を成長させること」つまり、インキュベーターは、起業に至るまでの具体的なお手伝いをするプロを指します。
 若い頃からリクルート創業者の江副浩正氏にかわいがられ、その熱い夢を具現化させることを喜びにしてきた彼でしたので、社長の夢を実現するインキュベーターという仕事を知ったとき、自分にとって天職に出会えたと直感したそうです。

 1995年、彼は、当時日本ではまだ珍しかったであろうインキュベーション会社『インターウォーズ㈱』を立ち上げました。
 現在は、経営幹部やプロフェッショナルな人材の紹介をコアに、コンサルティングや投資等のソリューションを提供すると共に企業内起業、事業継承、事業提携などを業務内容としています。
 これまで手がけた事業開発は30事業を超えていて、2005年2月の bjリーグ(Basketball Japan League)、 2004年4月のアルビ・ローソン2002年8月のペットウィズ(ペットビジネス)、2001年3月十石(おむすび屋)、2000年5月のカレトモドットコムなど、私が会長を務める異業種交流会501に所属する企業の創業にも関わりました。

 このような彼の人生は、ガンジーを支えた貿易商に触発されて経営を志し、現在は渋沢栄一にあやかって新潟から501社の上場企業を誕生させたいと創業者支援に取り組んでいる私と志を同じくするところがあります。
 新潟出身でもあり郷土愛にも溢れる彼は、私の最大の理解者であり、サポーターであり、相談相手。人脈は多彩で幅広く、鋭い人物眼、正確で豊富な情報、確かな先見性を持つ、彼。
 -彼こそが吉井信隆氏です。

 現在、異業種交流会501の顧問をお願いしており、私が支援したいベンチャーについてはほとんどのケースで意見をお聞きしています。さらに事業創造大学院大学の客員教授もお引き受けいただいています。

 志と夢を持って創業しようとする人を支援し、元気な明日の新潟に貢献するために、彼とこれからも多くのことを語り合い、多くのことを学ばせていただきたいと思っております。

 
 インターウォーズ株式会社     http://www.interwoos.com/
 吉井信隆氏著書「新規事業」はどうすれば育つのか (かんき出版)

池田 弘