【コラム第32回】 愛宕神社・神明宮「講談の会」

 私が宮司をしている新潟市中央区古町の愛宕神社・神明宮では、今年の秋から定期的に、東京在住の講談師 宝井琴梅先生をお招きして、「講談の会」という催しを行っています。

 講談というと、若い方にはあまりなじみがないかもしれませんが、大辞林(三省堂)によると、「寄席演芸の一。座して、前に置いた釈台を張り扇などで打ちながら軍談・仇討ち・金襖物・侠客伝・世話物などを、調子をつけて読む話芸。元禄(1688-1704)頃『太平記読み』から起こったといわれ、江戸時代は、『講釈』といった。」とあり、日本の誇るべき伝統芸能の1つです。

 この「講談の会」をお願いすることになった琴梅先生との出会いは、今年 8月の関東ニュービジネス協議会の納涼会として実現した「屋形船で歴史をたずねて」という企画でした。先生のご案内で両国近郊の歴史文化を探索したあと、隅田川を進む屋形船で講談を聴かせていただき、生の迫力に感動しました。
 先生とお話するうち、新潟の大和町で『梅桜亭』という寄席をお持ちになっていて新潟とご縁があることがわかりました。
 その『梅桜亭』で、3月から毎月連続で2009年NHK大河ドラマに決定した「天地人」(新潟市出身・火坂雅志先生原作)の主人公である直江兼続についての講談をされているとお聞きした時は、また更なるご縁を感じました。神明宮は、天正19年(1591)4月28日、上杉家より米四斗七升二合、社地二千坪の寄進された際、同時に直江(山城主)兼続から真筆の「高天ケ原」額並びに黒印書を賜り、御師次太夫が神明宮の神職として任命されたとされる神社だからです。この直江兼続の黒印書の由来から、明治に至るまでの間、諸役が永年免除されていたという歴史もあります。
 そして、先生の数ある演目の中に千葉の義民を題材にした「佐倉義民伝」があることもお聞きしたときは、琴梅先生との巡り合いは神様のお引き合わせかなとすら思いました。奇しくも愛宕神社境内社の口之神社の御祭神のおひとりが、義民 佐倉宗五郎だったからです。
 私は、気がつくと先生に「ぜひ大和町から更に足を伸ばしていただき、私の神社で講談をして下さい。」と、お願いをしていました。

 第1回「講談の会」は、9月の終わりに行われました。新聞社のイベント欄にも掲載され、町内の方や氏子さんなどのほか琴梅先生のファンの方も来てくださいました。夕方薄暗くなり、かがり火を焚いた愛宕神社の境内に椅子を並べ、幻想的な雰囲気の中で会が始まりました。夜が深まるにつれ、拝殿に組んだ高座から巧みに話される講談に誰もがぐいぐいと引き込まれていき、時折タイムスリップをして別の空間にいるような錯覚に陥りました。まさにプロの技でした。愛宕神社は新潟市文化財に指定されていますが、古くから守られてきたお社には、講談のような伝統芸能がよく似合うと再認識しました。
 11月末の2回目は、ところを変え、神明宮拝殿で行われました。初詣や節分祭、春、秋例大祭で、氏子さんや町内の方には馴染み深い場所が、一転、雰囲気ある寄席に変わり、これもまた趣深いものでした。

 現在、琴梅先生には、口之神社に佐倉宗五郎とともに御祭神として合祀されている新潟の義人、涌井藤四郎、岩船屋佐次兵衛の活躍を描いた「明和の騒動」の講談創作をぜひとも、とお願いしてあります。明和義人が祀られているお社で、義人たちを偲びながら、迫力満点の「明和義民伝」(仮称)がご披露される日もそう遠くないと思うと、大変楽しみです。

 私が小さい頃の古町は、市の中心部として今よりずっと活気があり、愛宕神社や神明宮にもよく人が訪れたものでした。しかし、残念なことに時代の流れとともに地域の神社に人が集まるということが少なくなりました。愛宕神社・神明宮で「講談の会」を続けていくことで、地域の皆さんに神社を身近に感じていただき、コミュニケーションの場としてもっと気軽に立ち寄れるよう見直されていけば、と思います。
 また、このように地域の核となって日本の伝統文化を地域で受け継いでいくことは、神社の有難い使命のひとつなのかもしれません。
 今後も楽しく、賑やかに「講談の会」を地域の人たちと創り上げていきたいと思います。

 今年もまもなく終わろうとしています。
 この時期は、大祓い式、初詣、続く2月3日節分祭と、しばらく神社に人が賑わう機会が増えますが、更に新年早々、第三回「新春 講談の会」も行われます。演題は「佐倉義人伝part3」と「寛永三馬術」。1月27日(日)午後7時から神明宮で予定しています。
 宝井琴梅先生の冴え渡る技を聴きに、ぜひ皆様お誘い合わせて、お気軽に神社に足を運んでみて下さい。   
 
 ※お申込・お問合せ 「講談を楽しむ会」事務局 (愛宕神社内) 電話025-224-3640
 ※宝井琴梅先生ホームページ   http://www5.ocn.ne.jp/~kinbai/