【コラム第30回】 政令指定都市記念ミュージカル「明和義人-新潟湊・市民自治の源流」

 「明和の騒動」- これは約240年前の江戸時代に当時の改革、重税、不況などから生活が困窮した新潟湊の町民が起こした一揆です。町民たちが蜂起し、自らの町を命がけで守り、自らの手でほぼ2カ月町政を執り仕切りました。このような例は全国でもこの新潟湊しかなく、しかもパリコミューンより100年以上前におこっていたということですから、これはまさに市民自治の源流ともいうべき史実だといえるでしょう。
 この立役者である「町民のヒーロー」涌井藤四郎、岩船屋左次兵衛等中心人物が、私が宮司を務める愛宕神社の境内社・口之神社に、千葉の義人 佐倉宗五郎とともに密かに合祀されていることは、以前このコラムでご紹介させていただいた通りです。
 しかしこの「明和の騒動」や明和の義人たちは、残念なことに新潟市民にすらあまり周知されていませんでした。
 
 今年政令指定都市になった新潟市では、この「明和義人」に象徴される自主・自立の精神とエネルギーを、これからも私たちの中に受け継いでいきたい『新潟市の誇り』として注目。広く皆さんに再認識してもらうため政令指定都市記念ミュージカルを制作しました。それが、8月31日から9月2日、新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」の劇場で開催された「明和義人―新潟湊・市民自治の源流」です。
 原作は「新潟樽きぬた―明和義人口伝」。新潟市出身の歴史小説家・火坂雅志さんが書いて下さいました。火坂さんは、直江兼続を描いた歴史小説「天地人」(NHK出版)が平成21年大河ドラマに決定した今をときめく人気作家です。秋田の「劇団わらび座」の協力を得ながら制作は進められ、市民オーデションにより、市民キャスト、下駄踊りの踊り手が決まり入念に練習が重ねられました。我が国際音楽エンタテイメント専門学校の学生も踊り等で協力させていただき頑張っていたようです。
 このように多くの市民が関わる中で完成した「明和義人―新潟湊・市民自治の源流」では、芝居、歌、下駄踊りや合唱、民謡、樽砧、古町芸妓の芸など新潟市民のパワーが見事に結集し、活き活きと、そして情熱的に「明和騒動」が再現されました。地元にあった素晴らしい歴史や誇れる人物を多くの市民が再確認できたという点で、大変意義あるミュージカルであったと思いますが、それ以上に、何より舞台の上の現代の明和義人たちに新潟の『市民力』を感じ、私も、そして多くの観客も感動しました。
 
 今年限りで終わらせるのは惜しいという声もあがっているようで、篠田新潟市長は、この市民参加型の「明和義人」の舞台を継続していきたいと市報で述べていらっしゃいます。また、今後、日本アニメ・マンガ専門学校出身の朝嶺鈴香さんが漫画にして発表するという話もあります。新潟が誇る「明和義人」が語り継がれて行くチャンスがますます増えるのは大変喜ばしいことです。
 一人でも多くの市民が「明和の騒動」での市民自治と義人たちを知り、自らの血に宿る熱い魂に気付き、新潟市民であることに改めて誇りが持てたら、きっと明日の政令指定都市新潟は真の市民力に支えられる自治都市として成長発展していけるに違いありません。そんな思いを確かにした政令指定都市記念ミュージカルでした。

池田 弘