【コラム第29回】 海外ミッション視察を終えて

  (このレポートは新潟経済同友会発刊『新潟経済同友会海外視察 中国視察四日間(ハルビン・琿春・延吉・長春)平成19年6月
   15日~6月18日』に7月23日寄稿したものです。) 

 このたびの視察(6/15-18)には、ご多忙中にも関わらず多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。早朝の移動や夜行列車での移動など大変ハードなスケジュールのなか、大きな事故もなく無事終えることができ、安堵いたしております。大変お疲れ様でした。
 代表幹事の佐藤食品株式会社 佐藤社長には名誉団長として、株式会社キタック 中山社長には団長として、お忙しい中ご参加いただきました。充実した視察、国際交流になりましたこと大変感謝しております。
 中山社長は、今日に至るまで新潟の経済人の代表として、また技術者の代表として、早くから東北三省に人脈を構築され、今日の交流の土台を築かれました。今回の黒龍江省技術庁主催の夕食会をセットしていただき、会の盛り上がりを通してその交流の深さを実感いたしました。
 また、事務局の水間専務、星野総務部長、日本通運株式会社の担当の方にも、事前準備から帰国まで大変よくやっていただいたと思っております。心から感謝申し上げます。

 視察の旅から戻り、程なくして、6月就航を目指すものの難航していた日本海横断航路のフェリー会社の来月設立が、4ヶ国協議で決定しました。航路実現に向け1歩前進です。1日も早い就航を目指し現在も調整中ですが、このような時期に我々経済同友会が、中国東北三省を訪問できたことにとても大きな意義を感じています。

 二日目に観た日本と旧満州国との歴史が垣間見れる琿春通商口でのロシア国境、そして図們江の北朝鮮国境。それは、なんとかして最短距離で日本と交易をしたいという中国にとって、ロシアを通るか、北朝鮮を通るかという国境であり、日本海に向かって出口がない立地において近くて遠い日本を望む中国の出口でした。ロシアを抜けたトロイツァ港から日本海横断航路が実現されれば、それは最短で日本の我が新潟県新潟市と繋がっています。日本海は、ほぼ五大湖と同じ大きさと言われており、日本とアジア大陸に囲まれた湖と捉えることもできます。航路さえできれば、行き来は日常的なことになるはずです。インフラが整備されれば物流だけでなく、観光などの人的交流もスムーズになります。私は国境に立ち、改めてこの航路の実現が、中国・東北三省にとって、日本・新潟県・新潟市にとって重要であるということを再認識いたしました。

 日本とお互い手を取り合って航路を実現させたいとする熱い思いの真剣さを感じたのは、特に琿春市においてでした。
 様々な税制優遇のある経済特区を有する琿春市の王金玉副市長は、国際交流のある上越市に研修生として留学した経験もあり、日本からの企業進出や交易について、熱心に話してくださいました。中でも印象的だったのは、「気温が-20℃、-30℃にもなる東北三省の冬は、寒くて活動できないのではないかと心配するかもしれないが、屋内にはオンドルがあって暖かく過ごしやすい。むしろ上越市のほうが地域全体の暖房システムが完備していないので生活するには寒いくらいだ。だから、東北三省の寒さは経済活動を行う上でなんら支障はない。」と力説されていたことです。
 余談になりますが、王副市長によると、同じように日本で多くを学び、日本を理解して交流の掛け橋として活躍している方は、中国各地にたくさんいらっしゃるとのこと。行政が中心となって、東北三省と自治体交流、文化交流を長年行ってきた蓄積は大きな財産になっていると思いました。日本海横断航路実現への思いを一にする大きな底力にもなっています。長年の地道な努力には、敬意を表すところです。

 今回は、新潟市の国際友好都市ハルビン市で行われた「ハルビン国際経済貿易商談会」を見学する機会にも恵まれました。会場の「ハルビン国際会議展覧体育センター」はとても広く、多くのブースで商談する多くの中国人でごった返していました。新潟からは、昨年の3倍の18ブース、国際交易をしている団体、企業合わせて25社出展されていました。新潟のとても身近な企業が,実際に中国で交易をやっているということを目の当たりにし大変感激いたしました。航路実現により、ますます活発になるであろう両国の交易の可能性を感じる光景は私にとって鮮烈でした。
 
 視察の全てを書ききれないのは残念ですが、この視察の一番の収穫は、近い将来日本海横断航路が就航することでもたらされる交易、国際交流を具体的にイメージできたことです。玄関口である新潟の日本における重要性は格段に高まり、北東アジアとの交易・交流地図が激変することは必至です。今回の視察が実りあるものになるよう、日本海横断航路の夢を現実にする日までより一層尽力してまいる決意をして、レポートを締めくくらせていただきたいと思います。

学校法人 新潟総合学院 理事長
新潟経済同友会 副代表幹事 
           池田  弘