【コラム第28回】 新潟県中越沖地震にあたって

 避難者約10万人、住宅損壊約12万棟など甚大な直接被害をもたらすとともに、観光産業をはじめ県内全域に大きな経済的影響を及ぼした新潟県中越大震災から約二年半余、再び地震が新潟を襲いました。中越沖地震、そう名づけられた今回の震災は、7月16日におきました。
 まずは、今回の地震でお亡くなりになった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、ケガをされた方、住宅等に被害を受けた多くの皆さんに、心よりお見舞い申し上げます。また、全国の皆様からは新潟県に安否を気遣うお見舞い、励まし、ご支援を頂戴し、誠に有難うございました。多くの方々に支えていただいている温かさを感じております。この場を借りて心から御礼申し上げます。
 この日、私はたまたま出張でアメリカのボストンにいて、手元の携帯電話のニュース配信で地震を知りました。絶え間ない更新が遠く離れたアメリカでも深刻さを伝えていました。翌日、新潟のスタッフから、地震発生時は祝日だったためNSGグループの学校・塾には人的災害がなかったものの、一部の校舎・教室が被災したということを聞きました。また震源地周辺に住む塾の生徒、学生、教職員、その実家などの被災状況の報告も受けました。中越大震災の復興にあたってきた新潟を襲った二度目の不運になんともいいようがない気持ちになりました。
 
 地震発生直後の柏崎市、刈羽村では、あちこちで倒壊した家屋が見られ、形はなんとか保っていても、とても中は住める状態ではない家も少なくありませんでした。道路は割れてうねり、あちこちで交通規制がかかっていました。慌しく往来する警察や自衛隊の車、空には旋回し続けるヘリコプター、余震が続きライフラインの復旧目処も立たないまま、家に帰れない状態を余儀なくされた人が数多くいました。
 学習塾・NSG教育研究会柏崎校・南柏崎校の校舎・教室もかなりのダメージを受けました。現地教職員だけの復旧は困難で、新潟から応援が駆けつけました。生徒たちの安否は、新潟市のスタッフが一軒一軒電話をして確認しました。避難していて連絡がつかない生徒には根気よく何度も連絡を取ったそうです。多くの職員の協力で数日後、なんとか授業が出来る状態にはなりました。責任者は、まだまだ余震が相次ぎ、町全体が混乱している中、夏期講座を予定通り開講するべきかどうかについて悩みました。震源地からの距離によって、比較的被害の小さい家庭もあれば、避難所や親戚宅から通うことになる生徒もいました。被災して生活もままならない、精神的にも安定していない生徒が果たして勉強に向かえるだろうか。しかしその中にも来春受験を控えた生徒が多くいるのも現実でした。そんな中開講を決断させたのは、子供を思う親御さんや子供たち自身の開講を強く望む声でした。「地震で勉強する時間も場所もない、こんなときだからこそせめて安心してしっかり勉強する場を提供してほしい。」教職員ももちろん被災はしていましたが、生徒と一丸となってこの地震を、この夏を乗り切ろうと覚悟を決め、夏期講座が始まりました。始まってはみたものの、戦う相手は不自由な生活に加えた勉強だけではありませんでした。最大の敵は日増しに強くなる暑さだったかもしれません。ガスが復旧していず冷房の効かない校舎には、応援として新潟市から大量の扇風機が運ばれました。学習環境としては非常に苛酷な環境ではありましたが、先生たちは生徒や親御さんの声にしっかり応え、こういうときだからこそ敢えて宿題も出したといいます。それに応えて平常時にも増してしっかり頑張った生徒たちの姿がありました。自衛隊による入浴設備の時間制限、転々とする住まい、様々な事情で全ての授業に出られる環境にない生徒もいました。しかしそれぞれの生徒が、それぞれの先生が、自分たちに出来る、出来る限りのことを精一杯頑張りました。講座が終わり先生たちは声を揃えて言いました。「柏崎の生徒は本当に、本当によく頑張った。そして、この頑張る生徒たちがいたから、元気とパワーをもらい、笑顔を忘れず私たちも頑張れた。こんなときだったからこそ生徒たちと一体感を持って頑張れた。」
 私も、地震の影響でさまざまなことを抱えながらも必死で頑張っている子供たちと教職員の姿に元気とパワーと勇気をもらいました。

 あれから、一ヶ月半、ライフラインは一部の地域のガスを残してほぼ復旧し、道路や建物もあちこちで工事がなされ急ピッチで復旧が進んでいます。少しずつ商店も開き始め、まち全体に少しずつ落ち着きと活気が戻ってきているようです。今なお避難所生活を余儀なくされている方もいらっしゃいますが、仮設住宅に入ったり、自宅などに戻ったりと、それぞれの生活に戻りつつあります。
 まもなく夏は終わりを告げますが、これからが被災者の皆さんの本格的な生活再建になるでしょう。厳しい状況ですが、何とか頑張って復興しましょう。私も新潟を愛するものの一人として精一杯尽力する心積もりです。一緒に頑張りましょう。

 そして全国の皆さんには、ぜひとも応援を再びお願いしたいところです。新潟は今回の地震でも新潟県中越大震災の時同様、必ず再び復興しますので、何とか、お力を貸していただきたい。
 非常に残念なことですが、東京電力柏崎刈羽原子力発電所でのトラブルから、まるで新潟県全体が安全でないかのように誤解され、風評被害が起きています。新潟県による農林水産物第5回目の調査では、発電所周辺加えて、野菜、魚からも放射性物質は検出されていません。また、国際原子力機関(IAEA)の現地調査結果でも「原発は安全に停止し、損傷は予想を下回った」との結論が公表され、泉田知事からも「『事実上の安全宣言』と受け止める。」とコメントが出されています。しかし、一度ついたイメージはなかなかぬぐいきれないでいます。多くの人たち復興に向けて頑張っているのに、それを挫くかのような風評被害の長期化は、追い討ちをかける甚大なダメージになりかねません。新潟が安全であることをぜひとも一人でも多くの人にご理解願えればと切に思います。これからの新潟は、秋の紅葉、冬のスキー、温泉も数多くありますし、海の幸、山の幸、豊富に楽しめます。ぜひとも新潟にお越しいただき、声援を送ってください。
 頑張る新潟を何卒よろしくお願いいたします。

池田 弘