【Break Time】 気がつけば 癒しの店

 六本木ヒルズのすぐ近くのビルの地下にお気に入りの店がある。
 名前は『カヴォー デュ ドン』。フランス語で “カヴォー”とは地下にある酒蔵のこと。“ドン”とは、偉大な人とか、素晴らしい人という意味で、お客さんを指すそうだ。
 この店は、ミニライブハウス・バーとでも言うのだろうか。ママ、マスター、ピアニストなど店員3~4人でやっている。実に気取らない小さな店だ。
 この店には側につく女性がいない。だからいいのだ。男同士で気兼ねなくゆっくり、寛げる。
 マスターが作るこだわりのイタリアン中心の軽食、ワイン、そして、シャンソン、カンツォーネ、ジャズなど選りすぐりのミュージシャンの生演奏。なんとも温かく心満たされる。― 大変心地よい。
 靴は脱いでもいいし脱がなくてもよいのだが、私の場合は、外で被ってきた重たい鎧を脱ぐように靴と靴下を脱ぎ、裸足になって、私専用のスリッパに履き替える。これがまたいいのだ。
 そして安堵の溜息と共にソファに腰を深く下ろす。新潟で仕事が終わって自宅のリビングで寛ぐのとなんら気分は変わらない。
 東京での仕事が週の半分くらいを占めるようになってから久しいが、この店は、気がつくと足が向く私の癒しの店だ。

 この店は、吉井さんに教えてもらった。(若い頃、ママにぞっこんだったらしい? もちろん今も昔もただの友達・・。) ヘッドハンティングとインキュベーションをやっているインターウォーズ株式会社の吉井社長である。吉井さんは新潟出身で高校の後輩である。リクルート新潟支社に勤務していた時からの付き合いはもう25年を超えている。彼は私が尊敬する創業者のひとりで、現在は私が運営をしている異業種交流会501の顧問をしてもらっている。
 吉井さんとは、インキュベーション、ビジネス、起業支援、人育ての話、経済の話など、重たい話題で意見をよく戦わせる。お互いに相当なエネルギーを使っての真剣勝負になる。
 議論し終わると、ふっと力が抜けて、食事のあとの2次会は、2人とも自然とこの店に行こうということになる。
 お互いが別々の仕事を終え、じゃ、ここで会おうか、と待ち合わせることもある。
 言わずもがな、この店に行こうとする時の気分は一緒だ。
 この店では、根詰めた話はタブー。ママの軽妙な会話を挟み、男同士、力を抜いて時を過ごすのだ。
 お客さんには、経済人も多い。吉井さんの知り合い、私自身の知り合い、そのジョイントもこの店では、違和感なく自然と行われる。和やかな店の雰囲気がそうするのだろうと思う。

 めったに遅くなることはないが、夜中の12時を過ぎる頃になると、吉井さんの歌も聴けるようになる。
 ポケットに手を突っ込み、実に気取って尾崎豊を歌う。
 尾崎豊はかつて吉井さんの家に近くに住んでいて、亡くなったその日も吉井さんはその自宅にいたそうだ。その話は何度も聞かされた。(注:直接尾崎豊には会ったことも見たこともないらしい。)
 陶酔しきって歌う吉井さんを見るのも既に見慣れた光景であるが、何度見ても飽きることなく、むしろ安堵となり心和むのはなぜだろう。
 めったに歌わない私にもお得意の歌のリクエストがかかる。いつも決まって歌うのが、ご当地ソング「新潟ブルース」、そして「信濃川慕情」。
 それしか歌わない。
 ワンパターンと言われようが、新潟をこよなく愛するものとしての使命だと自負し、今後もこれで押し通すつもりだ。(本当はもう1曲、私にふさわしい(!)愛溢れる、取っておきの歌があるのだが、ここでは内緒にしておこう。)

 『カヴォー デュ ドン』、この店は私にとって大切な癒しの空間である。

 HPはコチラから!!
  『カヴォー デュ ドン』     http://www.caveau-du-don.com/
  『インターウォーズ株式会社』 http://www.interwoos.com/

池田 弘