【コラム第72回】 なでしこ優勝に思う

 なでしこジャパンのWカップにおける優勝は、日本に大きな一撃を与えました。海外でも大きく取り上げられたようですが、嬉しいのは単に優勝を称えられているだけではなく、プレースタイルが革命的だと賞賛されている事です。
 ボールを放り込んで、背の高い選手が決めるという、世界の女子サッカーにおいてこれまで主流だった「パワープレイ」に対し、「短いパスをつなぐ」というあのバルサにも例えられるプレースタイルに対する賛辞です。

 今回の優勝は、男子選手に比べ恵まれているとは言えない環境で、選手たちがサッカーに打ち込んで得られた成果でした。代表チームにはアルビレックス新潟レディースからも、阪口夢穂選手(23)と上尾野辺めぐみ選手(25)の2人が参加しました。
 アルビレックス新潟レディースの選手は、全員が働きながらプレーしています。PK戦となったアメリカとの決勝戦でPKを決めた阪口選手は、ナミックスという会社で午後4時半まで働き、それからアルビレックス新潟レディースで練習を行ってきました。
 ナミックス側にはアルビレックス新潟のチーム運営の趣旨を理解した上で選手を預かっていただき、働く場を提供していただいているのです。

 その阪口選手、決勝戦が終わってからのインタビューに応じて話したのは「アルビのみんなありがとう」。私も胸を熱くしたシーンでした。
 今回の優勝でなでしこの選手たちにヨーロッパのリーグからオフアーがあるかもしれません。阪口選手にも声がかかれば、喜んで送り出してあげたいものです。

 以前は実業団中心だった女子サッカーの世界も、クラブチーム中心に変化してきました。そんな中アルビレックス新潟レディースも、プロパーの選手を育成する仕組み作りには、さらに力を入れていかなければならないと思います。
 NSGグループに所属する専門学校のJAPANサッカーカレッジは、来年度から高等部に女子を受け入れることになり、先般の県私学審議会で承認されました。アルビレックス新潟レディースなど、トップリーグのチームへの入団や日本代表の輩出を目指し、選手の育成を図ります。

 ところで今回の優勝で、日本の女性の強さというものを改めて感じました。15年ほど前のことですが、私が代表を務めるNSGグループに所属する専門学校が、世界中から留学生を受け入れているオーストラリアの大学と姉妹締結した時、その大学の学長がおっしゃっていました。「日本人の男子は世界一弱く、女子は世界一強い」と。
 日本からの男子留学生は、何か嫌なことがあったりやる気が無くなったりすると、簡単に辞めて帰国してしまうのだそうです。 それに対し女子留学生は、ちょっと位のことは歯を食いしばって耐えて勉学を続けるのだそうです。とても印象的な話だったので今でも記憶しています。
 私は日本男児が弱い理由は、家長制度が色濃く残っており、いざとなったら跡を継げば良いと考えているのも大きな要因の一つだと思っています。これに対し日本人女性が強いのは、嫁に行くか、はたまた職業人として生きていくかという、親元からどのような形で離れていくかを物心ついたときから考えなければならない環境で育つからだと思います。

 赤の他人の家に嫁に行くか、自立して生きるかという選択をしなければならず精神的にもタフになるからだと思います。
 もはや女性イコール嫁、子育ての時代ではなくなりました。今は何にでもトライできる時代です。その結晶がなでしこと言えるのかもしれません。

 Jリーグの理念は、「地域密着」です。もちろん男性と同様に女性にもその理念は当てはまります。もっと多くの女子サッカーチームが全国各地に生まれて欲しいものですが、今回の優勝がそのきっかけになる気がします。なでしこの素晴らしい活躍が、今後のさらなる女性サッカーの発展の起爆剤となることを願っています。

池田 弘