【コラム第74回】 新潟医療福祉大学西原ゼミの取り組み

 新潟医療福祉大学で注目すべき取り組みがありました。結果的に、学生が希望する企業へ就職するという成果も生み出しました。健康スポーツ学科の西原康行教授がゼミ生を指導して行ったものです。

 経済産業省では、会社を3年で辞めてしまう新卒社員が著しく多い状況を懸念し、「会社とはどんなところで、何をやるところなのか」という認識を学生に持ってもらう機会を設ける事で、会社と学生の意識のズレを修正していこうという取り組みを、2006年度から行っています。
 「社会人基礎力養成グランプリ」と言う取り組みです。これは言わば「社会人基礎力」を競おうと言うコンテストです。学生の、「前に踏み出す力」「考え抜く力」を、このコンテストへのチャレンジの中で養ってもらおうというものです。

 この呼びかけに応じて、今では多くの大学が、ゼミを中心としたチームで企画を作って、参加してきます。
 このコンテストで発揮が期待されているのは、テクニカルなスキルだけではなく、ヒューマンスキル、すなわち人間力です。

 一方、企業側にも、入社してすぐやめる新入社員が多い事は頭の痛い問題になっています。安くない教育コスト研修コストを考えれば、3年も経たないうちに辞められるのは大変なロスです。
 自社の社風にはまる学生、本気で働いてくれる学生をみつけたい。こう考える企業は、インターンシップ学生の採用を活発化しています。大手企業では、そのパターンでのコアになる社員の採用が増えています。
 なぜ、インターンシップを行う学生の採用を増やすのでしょうか。理由の一つは、会社の言わば「表と裏」を両方見せて、それでも入ってくる学生なら、納得ずくで希望してくる訳ですから、簡単に辞めたりしないだろう、という考え方があります。
 2か月のインターン期間中一緒に仕事をすることで、その企業にとって歓迎すべき人材かどうかを企業側が判断できる点もあります。

 さて、西原ゼミでは、昨年初めてこのイベントに参加しました。アルビレックス新潟とタイアップした取り組みで参加しました。
 アルビレックス新潟側にとっては、最近観客数が減少気味で、特に若い人たちがスタジアムに足を運んでくれないという悩みがありました。アルビにとっても、学生と対話する中で若者の感覚を知る事ができるのも魅力的ですし、その学生本人がサッカーの魅力に改めて気づいて、スタジアムに足を運ぶようになれば、という希望もあるわけです。
 西原ゼミがアルビ側に打診し、このイベントへの取り組みが決まりました。

 ゼミ生9人のチームは、「何故、若い人がなかなか来てくれないのか。どうやったら来てくれるのか」を2か月考えました。
 その結果、2010年10月31日のアントラーズ戦で、あるイベントを行うことになりました。それはゲームの前に、若者が集まってバーベキュー大会をやって交流しようというものです。見知らぬ同士の出会いの場を、ビッグスワンで提供しようというのです。
 9人は、スポンサーを集める「営業」担当や、ブログ記事を更新するなどの広報担当といったチームに分かれ、毎朝8時に情報交換の会議を持ち、情報の共有化と効率化を図りました。
 イベントの資金を集めようと、学生が企業を回り協賛企業を募りました。しかし事はそう簡単には進まず、何回も企業に断られましたが、そのたびに新しいプレゼン資料を作成し再チャレンジしたそうです。
 例えばJAでは、JAにとってのメリットを強調しました。JAの場合には、若い人のコメ離れが言われる中で、新潟のコメの流通をクイズにしたゲームをイベントに盛り込むことにしました。正解者にはアルビ選手のシューズを商品として贈ったそうです。
その結果、JAなどいくつかの会社からスポンサーになってもらう事ができました。
 イベントに参加する学生を集めるために、モバイルを使ったマーケティングも行いました。学生のメインデバイスは携帯であるという認識からです。携帯のHPを作り、情報を発信したり、「アルビレックスクイズ」を発信したりました。イベントへの参加も携帯からできるようにしました。
 そうした努力の甲斐あって、目標の100人を上回る120人が参加してくれたのです。

 こうした一連の取り組みは、アルビレックス側にとっても参考になるものでした。携帯が若い世代には有効なPR手段であることを、改めて認識できたわけです。
 このイベントを実行する過程で、学生は、マーケティングとは何なのかを学び、議論しました。その成果をリリースにまとめ、アルビレックス新潟に説明しイベントの承認を得ました。

 こうした努力の結果、西原ゼミの挑戦は、「社会人基礎力養成グランプリ」の奨励賞を取る結果となって結実しました。この一連の作業の中で、学生はいろんな事を学んだはずです。
 そして、参加した学生にとっての大きな果実が就職活動で実りました。リクルート面接の際に、この件を伝えたところ、人事の担当者らにとても好意を持って受け止められたようです。
 結果的に、参加した学生たち全員が、自分の希望する企業へ入社する事ができました。この取り組みで学生は、一つの事業に取り組み成功させるという経験をすることができました。入社後に仕事をする上で大いに生きる経験だったと思います。

 この取り組みは、今の日本で、企業と入社してくる新卒者のミスマッチをどのように解消すべきか、という問題の一つの答えを示していると思います。
 さらに、学生にとっても、希望する企業に果敢にチャレンジするための一つの行動パターンを示していると思います。
 多くの教育機関を擁するNSGグループにとって、学生の人間力の育成は、極めて重要なテーマです。ぜひ、参考になればと思い、西原ゼミの素晴らしい取り組みをご紹介しました。

池田 弘